「クリエイティブディレクターのお仕事&育休・産休からの職場復帰」#20

2019.10.23

第21回plusus meetsはplususメンバーである田中美奈子さんにお話を伺いました。
美奈子さんは現在、クリエイティブディレクターとして仕事をされている傍ら、2018年にお子さんを出産され、産休・育休を経て復職されたワーキングママです。
今回は第1章「クリエイティブディレクターのお仕事について」、第2章「育休・産休を経て」という2章立てにてお話しいただきました。

第1章「クリエイティブディレクターのお仕事について」

広告会社の基本となる仕事はざっくりと「クライアントから売りたい商品や伝えたいことの依頼を受けて、メッセージや企画と、メディアの枠などの伝える手段の掛け算で世の中にコミュニケーションする」という仕事。クライアントのパートナーとなりプロジェクトの陣頭指揮をとる営業、戦略を考えるマーケティングや企画制作を行うクリエイティブのスタッフ、メディアバイイングを行う営業などが、企業や商材・プロジェクト単位でチームになって仕事をすることが多く、クリエイティブディレクターの仕事は、クリエイティブと呼ばれる領域のリーダーに該当することになります。

美奈子さんの感じたクリエイティブディレクターの仕事の大切なスキルは

「クリエイティブスキル」

「ビジネスクリエイティブ」

「チームクリエイティブ」

の3つ。

「クリエイティブスキル」は、アウトプットのクオリティやパワーコントロール、そのためのターゲットの理解やトレンド感覚や情報のストック、アイデアの取捨選択力などいわゆるクリエイターとして必要なスキル。

「ビジネスクリエイティブ」は、クライアント課題のフォーカスやコストや条件に合わせた結果を出す力、プロセスメイク、パートナーシップといったビジネススキル

その上で、「チームクリエイティブ」というのは、チームビルド、チーム内でのゴール・モチベーションの共有など、チームメイクやチームマネジメントを行うスキルを指しています。

今回は異業種のメンバーに仕事の話をするということで、共通点も多いであろう「チームビルド」の話を中心に仕事の大まかな流れの話をしてもらいました。

プロジェクトが発足するとき、クリエイティブディレクターはそのプロジェクトの属性に合わせて、様々な色を持ったクリエイティブ領域のチームスタッフをアサインすることになります。

例えば、「ファッション、女子共感、デジタルトレンド」といったテーマであれば「SNSでの情報収集に長けていて、海外のトレンドに敏感なプランナー」や「ハイファッション文脈の画作りが得意で、SNSでの映えも意識したビジュアルが作れるアートディレクター」といった具合。この色はだいたい、やってきた過去の仕事の実績によって徐々に見えてくるものだそうで、やりたいプロジェクトに関われるようになるためには、その実績がどう積み上げられるかや、社内外の口コミがとても大切になってくるのだそう。

このプランナーやアートディレクター達は各々得意とする領域や人脈、経験値を活用しながら企画を進行していき、クリエイティブディレクターは自ら企画を進行させつつも、プロジェクト全体の進行を管理したり、協働する映像制作会社やイベント制作会社、PR会社などとの関係構築を図りながらプロジェクトを進めていきます。

この「チームビルド」はプロジェクトの肝であり、1番最初の重要かつ大変な山場であるとのことでした。

広告会社のクリエイティブスタッフのキャリアは人それぞれとのことですが、美奈子さんは新卒で入社してから、コピーライターとして新聞の突き出し広告の企画、ラジオ広告のナレーション原稿作成などを経験され、その後、徐々に任される仕事の規模や予算が大きくなっていく中で、クリエイティブディレクターとしての経験を積まれていき、現在のキャリアに繋がっているのだそう。

第2章「出産、育休・産休、からの職場復帰」

2018年に出産の後、産休・育休を経て職場復帰された美奈子さん。出産後は自身の身体の変化や、苦労する電車やバス、保育園の選択肢の少なさといった社会システムの不自由さに戸惑いを覚えたそう。

そうした環境の中、社会システムの不具合に悩んだり大きな変化を願ったりするより、自分の手の届く規模感を意識しながら“小さく実際の変化”を生んでいくことが大切だと考えたとのこと。また仕事に復帰するにあたり、仕事か家庭か、フルタイムか時短か、どちらかを選択したり二項対立で考えるのではなく、自分自身の選択肢を複数持つことで、自由度を上げ社会的な貢献度を上げることを思いついたといいます。今回は実際に小さく始めているテーマのうち、参加者の気になる3つのテーマについてディスカッションをしました。

①「多拠点生活ロケハン」「プチ移住」

-東京から離れた生活拠点を複数持つことで、インプットを増やしたり、選択肢の自由さを求める
美奈子さんは今まで逗子、須坂、白馬、北海道といった複数の地点をロケハンしてきたといいます。

そのなかで「仕事や住まい」よりもそこに住む人の「コミュニティ」やその地域の「カルチャー」がとても重要であるという気づきがあったそうです。その土地に「コミュニティ」と「カルチャー」があれば、仕事や住まいは自ずとついてくる、という考えは、実際に地方ロケハンを行ってきたという飯塚さん、明彩代さんも実感されたとのことでした。

②家族愛を育てる「こばちゃんこじちゃんグループ」

-子供にいろんな大人と接して欲しい、という願いのもと、周囲の大人と「みんなで子育て」をするグループを結成
例えば、定期的に別の家庭や環境に子供を預けて、そこで様々な価値観や経験を吸収してもらう。でも、その頻度や長さはどの程度が適切なのか?という問いから、子供の自主性を育てながら親が選択肢を与えるにはどのくらいの程度感が良いのか?という議論にも発展しました。
また、別の視点として、ゲスト参加いただいた原島さんは、子供に与えた刺激から子供がどのような反応を示すのか、それが発達にともなって変化していく過程を楽しんでいるといいます。

単なる「子育て」としてみるのか、「リアルUX体験」としてみるのか、考え方次第で親や周囲のこじちゃん、こばちゃんにとっても、一般的に考えられる「子育て」とは違った「子育て」があるのかもしれないと思いました。

③「機織り、はじめました」

-綿を育てて、縒って糸を作り、機織り機で布を作る、そうして自分自身の手で一から作ることが出来る機織りに魅力を感じ、機織りにチャレンジすることに。

今若者たちが活用するfab cafe※のようなイマドキの手仕事と、産業革命以前から存在する機織りには共通点があるのではないか、という気づきから、 美奈子さんの通う機織り教室の80歳を超えた年代の生徒さん(「fab ばあちゃん」)と、イマドキの「fab 若者」がコラボしたら何か面白い発見もあるのでは?!というアイディアもありました。
(※ 「fab cafe」 渋谷区にあるcafe。コーヒー片手にお店に設置された3Dプリンターやレーザーカッターといった最新の機器を使った制作が可能)

今回は9人の参加者のうち4人が女性という中、仕事のみならず、子育てや自身の生き方を実現するための取組をされている美奈子さんの話は大変参考になることがばかりでした。

美奈子さん、本当にありがとうございました!